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ヒットの舞台裏を探れ! インスタグラム(Instagram)本社訪問(長文・動画あり)
iPhoneアプリのマストハブはiMessageでもiTunesでもSafariでもFind My iPhoneでもなく、インスタグラム(Instagram)! 「一風変わった」(同社)写真共有アプリとしてスタートしたものが、今やカルト的ポジションを確保するまでになりました。
インスタグラムを愛するユーザーはなにしろ、どんな契約で縛ってもそこまでタイトにロックはできないぐらい強い絆でiPhoneに繋がれています。FacebookやTwitterにInstagramで写真ちょくちょく上げてくる人に聞いてみると、きっと「もうこれ抜きの携帯なんて使えない!」って答えが返ってきますよ。
「え、インスタグラムって友だちがランチ撮って送ってくるアレか!」―ま、まあ、そういう使い方もありますよね。でもそれだけじゃなくて、インスタグラムはリアルタイムで広い世界が覗ける窓みたいなもの。革命、デモ、醜、美、ありふれた日常など世の中のあらゆるものが、ここに凝縮されています。iPhone手放すと、その世界の窓がビシャンと音を立てて閉まってしまう。それ思うと手放せない、というわけで、OSを使い続ける最高のインセンティブとなっています。
iOSオンリーの注目アプリは他にもあります。InstapaperとかFlipboardとか。あとアップル自製のiMessageやSafariといった便利アプリもありますが、こういったアプリは他のプラットフォームにも類似のアプリがあるのに対し、Instagramはないんです。写真処理は真似ることができてもネットワークまでは一朝一夕に再現できないって意味で。
みんな友だちと一緒じゃないと乗り換えたくないものだし、画像のネットワークが既に存在するところに人は群れたがるものなので、少なくとも今の時点ではAndroidにもWindows PhoneにもInstagramに相当するアプリはないと言って良いでしょう。
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今から思うとInstagramは、誰でも考えつきそうなアイディアではあります。写真撮って、ベターにして、その場で共有する。できることと言っても、それだけです。
でもその運用が実に巧く、今撮った写真にフィルタかけて、わざとランドカメラやコダクロームで撮った古写真みたいな風合いを加えたんですね。で、好きなソーシャルネットワークにどれでも選んで投稿できるようにした。
画像版Twitter、亜種のFlickrと見ることもできるけど、やっぱりその枠に収まらない。正真正銘のブロックバスターなのです。
始まり
共同創業者のケヴィン・シストロム(Kevin Systrom、28歳)とマイク・クリーガー(Mike Krieger、25歳)、たったふたりの若者が始めたInstagramがAppStoreにデビューしたのは2010年10月6日12:30 am(米西海岸時間)。
会社の顔は、年上で背の高いケヴィンの方です。前置き抜きでズバッとポイントに切り込んでくる人で、直接お会いしてみたらこないだBest Buyがスーパーボウルで流したCMで見た通りの人でした(下の動画の0:14)。
Odeoインターンとしてジャック・ドーシー(Jack Dorsey)やエヴァン・ウィリアムズ(Ev Williams)と知己を得、彼らがサイドビジネスとして立ち上げたTwitterがブレイクするのを内側から眺めたケヴィン。
その後、スタンフォード大学院に在学中に知り合ったのが、愛想のいいブラジル人プログラマーのマイク・クリーガーです。マイクは、ものすごく苦労してるのに、それをおくびにも出さない、親しみやすい笑顔が魅力の人です。
ふたりで最初はBurbnという位置情報共有サービスを始めたのだけど、パッとしないまま頓挫。で、二度目の正直で出したInstagramでブームに火がついた、というわけです。
現在
インスタグラム(Instagram)は社員たったの10名で、米国内にいるのは、うち8名だけ。 こんな小さな会社なのにこの1年で獲得した新規ユーザーは1500万人超、写真アップロード枚数は累計5億枚を数え、Twitter創業者ジャック・ドーシーなどから計750万ドル(約5.9億円)の投資を確保しています。
サービスは既に10ヶ国語に対応。米国内でのヒットを皮切りに中国、ブラジル、欧州一円でもユーザーの裾野を広げています。ウェブ経由で使えるインターフェイスがなくて、iPhoneでしか使えない時点でコレですから、すごいですよね。こうして勢いづく間、バックエンドでは大勢の開発部隊を抱える企業顔負けの改善、スケーリング、開発を続けてきたのです。たった10人で。
外から見ると、インスタグラム(Instagram)のチームは平穏な集団に思えるかもしれません。iPhoneアプリとサイトがある程度のオペレーションですからね。
でも昨年10月以降は超多忙で、ハッシュタグや自動入力なんかの新機能を加え、コメントUIを一から作り直して、メール共有を追加し、全画像を送信するパイプラインをOpen GLに変更、ニュースビューも作って、えーとあとなんだ高画素写真にも対応して、10ヶ国語のサポートを追加し、新しいフィルターこしらえて、新機能もわんさか補強。それ全部ガンガンやりながら、この指数関数的に増えていくユーザーベースに負けぬよう屋台骨のバックエンドの再構築までやってるんですね。
これだけ働いてるのに、みんな二言目には「Androidにいつくるの?」、「Windows Phoneにはいつくるの?」と来るそうな...そりゃギズもそこが一番知りたいところだけどね。他プラットフォームに解禁になったら、今の1500万人どころじゃ済まなくなりますからねー。
ジャスティン・ビーバーのトラフィックはスケーリングが課題
Instagramは零細も零細、本当に小さくて、オフィスはサンフランシスコのサウスパーク地区にあるTwitterの旧オフィス所在地(164 South Park St)...というのは良く知られていますが、実はあれも別会社からオフィススペースをリースしてるだけで、正確にはTwitter旧オフィスではなくTwitter旧会議室...そこに机並べて、それで全部なんですね。それが車2台収容のガレージぐらいの大きさで、あとはちょこっと受付けスペース(受付嬢はいない)と、ヴィンテージカメラのコレクション、牛柄の絨毯があるだけ。小粒ですが、ブランド力はビッグです。
「セレブさ。物事をブレイクさせるのは」―シストロムCEOは、牛の心臓ほどもあるカップからコーヒーをがぶ飲みしながら、こう言い切ります。
ちょうど取材の前日にはバラク・オバマ大統領が会員登録し、写真を流し始めたばかり。Instagramもそこまで来たサインだね、と言われてました。オバマはFlickrにもFacebookにもアカウント持ってるんですけど、きっとオバマ(あるいはその側近)はInstagram利用者に他と違う、素晴らしいものがあると見込んで、他のチャンネルではリーチできない人にリーチする手段と考えているんでしょう。
天下の大統領がネットワークに加入すれば当然ニュースになるし、大勢の人が来ます。が、それは企業側に準備がないと対処できないタイプの事件ではありません。結局あのジャスティン・ビーバーに比べればオバマの影響なんて微々たるものだといいます。
「うちに入った最初のセレブリティはスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)。なんかメールが来て、『スヌープ・ドッグの人たちが話があるそうだ』 とあったのね」とシストロム。横でマイクがクククッと笑います(よく笑うのだ)。
「それが1年前。あれから会社としてこんなに成長したんだなって思うと感無量だよね。1年とちょっとでバラク・オバマみたいな人が登録してくることは最初から予想がついてた...と言えば嘘になる」
それが今やSnoopもオバマもビーバーもいれば、トニー・ホーク、ジェイミー・オリヴァー、ライアン・シークレストもいて、有名人には事欠きません。マスコミではナショナルジオグラフィック、NBC、ABC、Playboy。フォロワーの多いアカウントが加われば会社も自慢になりますし、それ以上に彼らの斬新なInstagram活用例を参考にしながら流行の真ん中を狙う開発ができます。
「デザインのこと、何がブレイクするか、それを僕らは本当にものすごいスピードで学んだ。特にセレブのユーザーからね」と、会社のCTOとして開発を総括するクリーガーは説明します。「別に最初からLikes(いいね!)が5万件入る場合想定してデザイン考えてるわけじゃないのだけど、ビーバーの写真は余裕でLikesが5万件ついちゃうんだ。こうなると全く別次元のUIの問題だよね。あと例えば突然コメントが何百件もついて、とても一度に表示はできないし、表示しようとすればアプリのスクロールがエンドレスになっちゃう、という問題」
こういうジャスティン・ビーバーのような人気ユーザー ―その中には写真家コール・ライズ(Cole Rise)のようにInstagramで有名になった人もいる― に対処するため、Instagramではコメントスレッドを始め、写真下のメタ情報を畳めるようにしたんですね。あれがなかったら、ユーザーは次の写真見たいだけなのに、スクリーンの大事なスペースを無駄遣いするアプリのままだったかもしれません。
この話で、Android、Windows Phone、Blackberryに対応してない理由がなんとなくわかった気がしますよね。そう、スケーリングが追いつかない問題があるからなのです。
Twitterクジラで僕が学んだこと
Twitterはこのスケーリングで解消の一歩手前まで行きました。最初の爆発的増加を迎えた2008年、100万人の大台に乗った辺りから、しょっちゅうダウンするようになり、落ちると出てくるTwitterクジラ(Fail Whale)は万人に忌み嫌われる哺乳類となりました。
それもこれも悪いのはひとえにTwitterのバックエンド。元々はオープンソースのアプリケーションフレームワークで動作する極めてシンプルなプログラムとして開発されたものだったんですが、だんだんそれでは規模的に立ちゆかないことがわかってきたのです。
Twitterのアーキテクチャは、(ブログ専用プラットフォームのような)コンテンツ管理の面は問題なかったのですが、指数関数的に増加するユーザー同士の間で交わされる真のリアルタイム通信システムにはそれほど向いてませんでした。メッセージングシステムにはそれなりの要件(待ち行列の安定性、同時並行処理、堅牢なキャッシング)があるのですが、それを持ちあわせてなかったんですね。
Twitterのチームでは自力でこうした機能のコードを書いて、既存のフレームワークに加えようとしました。ところが加えるたびに、また新たな安定性の問題が生まれてしまったんです。一番大きな問題はやはりなんといっても、人のネットワークのサイズがどんどん大きくなっていたこと。Twitterは元々Railsで開発したんですが、Railはクエリを沢山作ることで複雑なデータベースの関連性を単純化するものなんですね。ところがTwitterで人が築くソーシャルな繋がりは複雑で、それを支えるだけのクエリー数はとてもサーバーでさばき切れない。結果どうなるか? あのクジラが出てきてみんなギャーと。いうわけです。
この修羅場をシストロムは全部間近で眺め、やがて遠巻きに眺めてきました。Odeoが完全に失敗し、その燃え残った灰から生まれたTwitter。Odeoインターンとしてそれを眺めてきた彼だから、うかつにAndroidには手を伸ばさない。Twitterの二の舞にならぬよう、今はとにかくバックエンドをうんと強くすることに専念してるんですね。
「動いてるという、これに勝るフィーチャーはないんだよ」「うちの履歴を他のソーシャルメディアのスタートアップと比べてみると、かなりいい成績だと思う。スケーリングにはとても慎重に取り組んでるからね」(シストロム)
ここ1年、チームではさらなる成長に向けた計画を進めてきました。いざ負荷がかかってからシステムを補強する後手後手の対応だけは避けたいと考えているので、1ヶ月先、半年先に秒あたりのLikes(いいね!)数がどうなってるか計算し、それを支えられるようアプリとバックエンドのリコンフィギュアを行ってるんですね。InstagramにはTwitterくじらもTumblrbeastもありません。アップタイムがあるだけ。ずっとそうでありたい、というのが彼らの願いです。爆発的人気になっても。
「正直言って、1500万人というのは僕らの目指してる数のほんの一角に過ぎないんだ。だから半年、1年先を見越さないと」(シストロム)
これが結構複雑な難業なのです...Instagramはモバイル端末でしか使えないアプリなので...。ウェブアプリじゃないし、ブラウザで動くアプリじゃない。だから、次段階に持っていくには、今までと全く違うプラットフォームに対応させないといけない。つまりiOSと同じユーザーエクスペリエンスをAndroidでも実現する、っていうこと。これは難題です。みんな全く同じもの期待してきますからね。
今から1年以上前、シストロムはInstagramがAndroidに対応する、と発表しました。「で、どこにあるの?」と、シストロムも会う人、会う人に聞かれるそうです。明るくて率直なのはいいのだけど、シストロムにはおどける傾向があって、時々真面目に言ってるのかどうか分からなくなるんですよね。聞き手は「からかわれているのかな?」と思って戸惑うかもしれません。Androidについて尋ねたら、またそれか、という顔をつくったんです。怒ってる顔の一歩手前だったけど、あの嘲りの表情はやや理解不能でした。
「Androidフォンの話はかなり前からしてるようですが...」と僕がはじめると、「かなり前からだって!」と話を途中で遮って、「これからもずっと喋り続けてやる!」ときたんです。
「ひとつのプラットフォームにユーザーが1500万人いるソーシャルモバイル企業は他にない。それだけの規模の所帯を抱えてる会社は他にもあるが、みんなマルチプラットフォームでその数字だ。我々はひとつのことに専念してそこで本当に良い結果が出せれば、そこからチャンスが生まれると考えた。結果的にそれで助かっている。
なにもAndroidのチャンスに賭けたくないと思ったのではない。携帯の質がどうこういうんじゃないんだ。Androidにも素晴らしい携帯は沢山あるし、現にうちのオフィスにも美しいディスプレイと美しいカメラを備えたものは山とある。そういうことではなくて、サイトやる人間がなにしろたったの3人だったからね。今は8人、世界全体でも10人だけど」
「チームが自然に大きくなりさえすれば、他のプラットフォームにも対応するさ。1年前には、まさかこれだけのスピードで成長するとは思わなかったから、『さ、次はAndroidやるよ』って軽い気持ちで話してたんだけど、状況が変わって、何事も優先順位を考えて動かないといけなくなった。何事も優先順位を考えてやるとなると、差し当たり一番重要なのは今あるサイトが落っこちないようにすることと、ユーザーを無茶苦茶ハッピーにすることだ。そこに嫌でも集中しなきゃならなくなった。人は人、どんな携帯持っていても、人は人。いつかAndroidに進出する日が今から楽しみでしょうがないよ。進出したくないなんて冗談で言ってんでしょ? 進出したら今の倍の成長になるんだぜ」
世界で最も人気のモバイルプラットフォームをスルーして、InstagramがAndroidより先にWindows Phone向けのアプリを開発するという噂に関しては、なんと?
「我々は常にあらゆるプラットフォームを念頭に評価しているが、Androidが次のステップなことは自明だろう」
だったらバリュエーション2000万ドルで社員ひとり当たり100万ドル近い投資がついてるんだから、さっさと社員を雇えばいいのに。なぜそうしないのか?
「うちはベストの中のベストしか雇わないんだ」
ふむ...ここでまた振り出し...なんかすっきりしない答えですよね。無論、チームが少数精鋭だから、お金も底を突かないというのは分かるのだけど。食い扶持増えれば収入も増やさなきゃいけないしね。とりあえずキャッシュは潤沢にあるので、そんな急がなくても大丈夫なんでしょうね。少なくとも、今のところは。
Facebookの先
「ローンチした時には(iPhone 4は)まだ発売3週間。カメラは素晴らしいし、ディスプレイは美しい。僕らがそれまでやったようなことをやろうとしてる人は大勢いた。そんな中、僕らはいくつかキーとなるところで差別化を図ったんだ。そのひとつがタイミングだ」とシストロムCEO。
確かに、こういうことはタイミングこそがすべて。過去が現在のプロローグだとするなら、Instagram飛躍のタイミングとしてこれ以上のタイミングはないでしょう。シストロムもクリーガーも野望のオーラがすごいです。InstagramはライバルのPath倒すのとか目じゃない、Facebookぐらいビッグになりたいんですね。ビジュアルでストーリーを伝える不可欠な媒体になりたい。人がここに来て、見て楽しめるようなエンターテイメントのプラットフォームになりたい。その目的達成のためには、あらゆる国であらゆるプラットフォームに進出しなければなりません。
「僕らが注目してるのは、AppleでもAndroidでもなんでもいいけど、携帯持つ人の数がどれぐらいで自然の限界に達するのかな、ということだ。将来はみんなコンピュータのような携帯っぽいもの持ってるとしか思えないし、その携帯にはカメラが必ず内蔵になってるとしか思えない。となれば、将来はスマートフォンがステータスクオ、ということになる。自分の人生・生活をどう人に伝えるのか? これは自問しておかないといけない問題だ」(シストロム)
「Instagramを写真共有サービスと捉える発想は好きではない。そうは思わない。僕はむしろ通信の道具だと思うんだ。ビジュアルなコミュニケーションツールさ」
「印刷機は世界に実に大きな影響を及ぼした。印刷機のおかげでみんなが本を手にし、読むことができるようになった。僕らのやってることが印刷機だと言ってるんじゃない。テクノロジーが人間を前にプッシュして、新たな可能性の鍵を開いてきたってこと言いたいのね。僕らが注力してるのは玩具の作り方じゃなく、本当に世界を変えるにはどうすればいいのか、ということだ。創業1年で1500万人確保するチャンスに恵まれた会社が他に何社ある? そんなに多くないよね。僕らはこのチケットを握りしめて、波に乗りたいんだよ」
という意気込みで今日もコツコツ下積みに励むInstagram。周到に。整然と順序立てて。人にどんなにちっこい会社と思われても構わずに。
もしFacebookに飲まれないで...Twitterの新写真ホストサービスや他の競合に潰されなかったら...Andriodアプリを出してWindows Phoneアプリも出して...そして今までやってきたことを続けながら、もっとビッグにスピーディーに巧く展開していけたら...その全てができたら、あるいはそこに辿り着けるやもしれません。どっちに転んでも、これは楽しみ。
[Instagram]
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MAT HONAN(原文/satomi)
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